習い事がある生活

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いきなり楽器を買ってみた

社会人3年目、特に趣味が無かった私ですが、急に楽器を習いたくなり、キャッシュで未経験のフルートを購入

中学時代フルートに憧れ

音楽経験は幼稚園から中学校までヤマハでエレクトーンを習い、中学校の部活動では吹奏楽部に所属しておりました。夏の吹奏楽コンクールでは金賞を受賞するぐらい活動は盛んで、夏休みは部活漬けの毎日でした。

当時私が担当していた楽器は、金管楽器のトランペットです。担当楽器を選択する際に、トランペットパートの先輩から強烈な勧誘があり、他の楽器を試す事なくトランペットに決まりました。

メロディーラインを担当する事の多いトランペットパートは、誰でも知っている花形楽器ですが、どうしても楽器を吹いている表情がゴリラの様に思えてしまい、高音を出す際は力が入り顔が赤くなってしまうのも、思春期の私には恥ずかしいと思っていました。

そんな時、吹奏楽部内でとても可愛いと人気だった先輩が、美しくフルートを奏でる姿を見て、密にフルートパートに憧れを抱いていました。しかし、一度所属が決まったパートから、別のパートへ移る事が何となくタブーとされていたので、その思いは内に秘めたまま、時が過ぎていきました。

いつしか大人になり音楽とは無縁の生活の中で、また楽器に触れたいと思った感情は不思議なのですが、思い立ったら割と行動が早い方なので、まずはヤマハ大人の音楽教室の無料体験に申し込み、その帰り道には楽器店に足を運んでいました。

選択した楽器はやはり憧れの強かったフルート。無料体験では丁寧に楽器の組み立て方から教わり、音の出し方、唇の使い方をマスターし、不安定ながらも何とか音は出ました。これは練習すれば何とかなりそうだな、という低いレベルにも関わらず、頭の中では楽器を購入する方向で決断していました。

楽器を買えば絶対に練習する、と自分を追い込み、何を目指していたのか自分でも分からないのですが、7万円近い金額を投資しフルートを購入しました。家族はビックリしていましたが、実家暮らしの社会人ですので、何を買おうが何をしようが全て自己責任です。

おじいちゃん先生のもとを尋ねる

楽器を買ったら次は練習場所だ、と思い習いに行く教室をネットで探しました。大手の音楽教室が数ある中で、私が選んだのは、個人でやっているフルート教室でした。月謝は月4回のレッスンで1万円ちょいでしたが、講師の方は何と!おじいちゃん。

この先生で大丈夫かな?という失礼な発想が頭をよぎりましたが、その先生の奏でる音がとても柔かく、響きが盛大で一瞬でその音色のファンになりました。こんな音が出せたら誰かを感動させてあげられるのかな、という思いから私のフルートお稽古がスタートしました。

学生の頃はクラシック曲に興味が無く、難しい、暗い、などとネガティブに感じており、ただ譜面を読んで、感情などは持たずに譜面通りに演奏していた私ですが、大人になって楽器に触れると、何だか妙にクラシックに憧れるようになりました。

おじいちゃん先生は、練習曲も自由に選ばせてくれたので、簡単なクラシック曲を次から次へと練習する日々が続きました。数か月が過ぎ、何とか音階を覚えて、曲がまともに吹ける様になってきたものの、先生の様な迫力のある密度の濃い音が出せないのが悔しくて、自宅マンションで家族からうるさい!と言われながらも、時間があったら練習に取り組みました。

初めて人前で披露する事に

当時勤めていた会社では、年に一度会員様をお招きしてクリスマスパーティーを開催するのですが、その際はスタッフの余興という事で、新人が特技を披露したり、ダンスをして会場を盛り上げます。結婚披露宴の余興的な感じで、会員様は温かい目で見守ってくれるので、そんなにクオリティの高い演出は求められません。

今年の出し物がまだ決まっていない、と担当の上司が話していたのを聞いたので、私が出ます!と自ら宣言し、まだまだ人前で披露するレベルではないフルート演奏に挑戦しようと試みました。どうせ習うなら何か発表の場があった方がモチベーションも上がる!と思っていたタイミングだったので、これは“絶好のチャンス”でした。

フルートのソロの演奏では、レベル的にも時間的にも聞く方の身がもたないと感じたので、ピアノを習っていたという後輩に声をかけ、一緒に出てもらえないか交渉したところ、自信が無さげな返事でしたが引き受けてくれました。今覚えば後輩は巻き込まれ事故です・・・。

まずは、おじいちゃん先生の元へ後輩も一緒に連れていき、クリスマスパーティーに出るから、残りの日数で発表できるレベルになるように、レッスンをしてもらえないかとお願いしました。大手ではなく個人の教室だったので、融通を効かせてもらい、後輩も一緒にピアノの指導までしてもらえました。その間、月謝以外に特別指導の料金を請求されるような事はなく、とても協力的で粋な先生でした。

曲を演奏する順番や、途中で口を休める為のMCを入れる演出、ピアノのソロパートを作ったり、おじいちゃん先生のプロデュースは見事で、それが台無しにならないように、私たちは本気で練習に取り組みました。

度胸試しの舞台は会社のクリスマスパーティー

仕事にも慣れてきて、特に変化のない日々の中で、これほどの緊張感を味わうのは本当に何年振りだろうか、とステージの脇で出番を待つ私はそう感じていました。誰かに無理やりやらされるのではなく、自分でやろうと決め、あの体験レッスンに行った日が、ついこの間の事の様によみがえります。

ついに、本番。舞台となるホテルの宴会場は、沢山のお客様で賑わっています。私は震えている手を何とか落ち着かせ、ステージに上がります。その表情はこわばっていて笑顔はまるでありません。1曲目は私の呼吸のタイミングで、ピアノ伴奏と共に演奏が始まるという予定でしたが、タイミングがズレて、フルートの音もかすれ、それはひどいステージの幕開けになってしまいました。

曲が続いていくにつれ、緊張は面白いほどにスルスルと解け、冷静に会場を見渡しながら演奏する余裕がでてきました。温かい眼差しで見守ってくれる人、料理に夢中で全く聞いていない人、堂々と電話をしている人と、よくあるライブ会場での一体感とはかけ離れている空間でしたが、最後は大きな拍手で幕を閉じ、とても達成感のある初舞台でした。

目の前のテーブル席に座っていた方が、音大出身の音楽家だという事が後にわかり、その方には聞くに絶えない演奏だったかと思いますが、出来はどうであれ人前で披露する、という経験が得られた事で度胸がつき、下手くそでも何でも挑戦する事がやっぱり大事なんだと改めて感じた経験でした。

会社のイベントで余興を担当したところで、臨時のボーナスが出る訳でもない、会社での評価に繋がる事は全くありません。それどころか普段の休みはほぼ練習にあてていたので、時間に換算したらマイナスです。

今の時代、会社の催し事にプライベートである休みを使って参加する事や、有志で出演するなんてあり得ない、見返りがないのならやらない方が得、という考えが常識的になっていますが、お金には代えられない経験をさせてもらったことを私は大変感謝しています。こういった機会が与えられる事は滅多にないチャンスであり、挑戦する事は決してマイナスな事ではないのです。

新しい事をあえてやってみる

私の場合は、たまたまフルートが過去の憧れとして頭の片隅にあり、大人になって経済的にも余裕が出てきた事から、習い始めてみましたが、このジャンルは何であれ、今までやっていなかった新しい事にあえて挑戦する事で、脳が活性化し、程よい緊張感が味わえ、新しい何かが生まれます。

新しい何かとは、私の場合おじいちゃん先生との出会いや、クラシック曲の良さ、曲に感情を乗せて表現するひらめきなど、フルートを始めていなかったら生まれなかった事です。人は新しい事を始める時、重たい腰が持ち上がらずまた今度でいいや、とそれをやらなくていい理由(言い訳)を探します。

年齢のせいにしたり、時間がない、お金がないという言い訳は環境的要因の様に思えますが、どれも気持ちの問題です。それを振り切って積極的に新しい事をやってみると、新たな自分を発見し、今まで見ていた日常の景色すら変わって見えるのかもしれません。